2011年12月12日作成 2011年12月28日更新

鉛バッテリー用パルス充電器の製作

ここ一年半くらいの間、二週間に一回くらいしか車に乗らなかったら、数日エンジンを掛けないだけでバッテリーが上がってセルが回らなくなるほどバッテリーが劣化してしまったのですが、トランスが入っているだけの古くて安い充電器で充電してもさっぱり回復しないので、バッテリー充電器を作りました。

通常、鉛バッテリーは放電すると、バッテリー液の硫酸と鉛が反応して電極板に硫酸鉛が生じ、逆に充電すると電極板の硫酸鉛が溶けてバッテリー液の中に戻っていくのですが、放電した状態で放置すると硫酸鉛が結晶化して成長し、充電しても溶けなくなるので充電できる容量が低下してしまうのだそうです。この現象をサルフェーション (sulfation) と呼び、鉛バッテリー劣化の大きな原因になるようです。

詳しいことは google とかで「サルフェーション」を検索してみてください。

理屈はよくわからないのですが、バッテリーにパルス状の電圧を加えてやると、このサルフェーションを除去できるようなので、パルス発生機能付きの充電器を製作してみました。

回路図・ソースコード

手持ちの部品だけを使って作ったのでこのような回路になったのですが、DC-DCコンバータ部はNチャンネルのFETではなくPチャンネルのFETを使用するとGNDが共通になって、電圧と電流の計測が簡単になります。

今回はオペアンプの減算回路で2点間の電位差を計測しているのですが、電位差が小さい時と計測電圧がオペアンプの電源電圧に近くなったときに正しく計測できないので、後になって思えばオペアンプを使わずに3箇所の電圧を計測して、電圧と電流を計算すればよかったかなと思います。オペアンプの使い方が間違っているのかもしれませんが。

マイコンにはR8C/M12Aを使用しています。秋月で100円と安く、マニュアルが日本語なので使いやすいです。予約領域にあるROMを使用しているので、R8C/M12Aの予約領域にあるROM/RAMを使うも読んでください。

コイルにはジャンク部品を使用したのでインダクタンスは不明です。無線ではないので適当に巻いてあればそれで良いです。

電源部のコイルのインダクタンスが小さいとリップルが増え、大きいとリップルが減る(のかな?)。

パルス発生部のコイルのインダクタンスが小さいと、コイルがすぐに飽和してしまってパルス幅を広くできないので、パルスのピークも低くなります。

スイッチング周波数が高いので、ダイオードにはショットキーバリアダイオードを使用します。

出力可変の安定化電源としても利用できたらいいなと思って作成したのですが、平滑コンデンサが大きすぎるのか負荷が軽い時に電圧を下げきれませんでした。負荷に数十mA程度流していれば 0.7Vくらい〜14Vくらいまで可変できます。電流制限付きで、制限値も可変できるのがなかなかに便利で、たとえ出力をショートしても設定電流以上流れません。

外部電源で動作させるなら L202 は必要無いかと思っていたのですが、テストしてみると Q101がONになっている時でないとパルスが出ないので、やっぱり L202 を取り付けることにしました。

マイコンのプログラムは簡単で、電圧が設定値よりも低ければパルス幅を増やし、高ければパルス幅を短くするというような単純な制御になっています。タイマーのPWM機能を使っているのでレジスタにパルス幅を書きこむだけで波形を出力してくれます。

充電器出力の波形

マイナス端子から波形のピークまでは 43V くらいあります。

周期 18.432kHz≒54.253us パルス幅 542.53ns(任意に設定可能)。パルス幅を広くすると波形のピークが高くなるのですが、あまり広くすると発熱が多くなるので今回使ったコイルではこのくらいが良いようです。

触るとほんのり暖かい程度の発熱です。

バッテリー端子の波形

接続ケーブルを通ると波形のピークがずいぶんと下がってしまいます。バッテリーの内部抵抗がかなり低いようです。セルを回すときに100Aとか流れるんだから当たり前か。

劣化したバッテリーだど振幅が大きく、正常なバッテリーだと振幅が小さくなるように見えました。

基板写真は必要ないかな?

コイルとショットキーバリアダイオードは壊れたスイッチング電源(ATX電源)から取り出して使用しました。スペックは不明です。

バッテリー再生効果の検証

パルス充電でサルフェーションを除去し、劣化バッテリーを再生させます。効果はあるのでしょうか? 試してみました。

放電テスト装置(?)を作りました。

12V60Wの電球で放電しながら、1分毎に電圧を自動記録します。電圧が10.0Vを下回ると自動的に電球を消灯して終了します。

12V60Wなので 60/12=5 で、だいたい 5Aでの放電ですね。

放電電圧グラフ

数日エンジンを掛けないとバッテリーが上がって、セルが回らなくなる 40B19 のバッテリーでテストしました。

40B19 のバッテリーは 5時間率で 28Ah の容量のようなので、新品なら 5Aでだいたい 5時間くらい放電できるはずです。

パルスを加えると、確かにバッテリーの容量は回復するようです。

1時間しか持たなかったのが 6回目の放電で 3時間持つようになりました。もう、これ以上伸びなくなってきましたのでこのあたりで限界なのかもしれません。

いつ購入したバッテリーなのかを調べてみたら、5年も前のバッテリーだった。もう交換しろよ(笑)。

充電電圧グラフ

電圧の上昇具合がゆっくりになって、たくさん充電できているのがわかります。

トランスの出力は15V位なのですが、充電4ではパルス回路で昇圧されて、バッテリー電圧が 16Vくらいまで上がっています。


サルフェーション除去機能付きのバッテリーパルサーとかパルス充電器が市販されていますので、わざわざ自分で作る事もないと思います。新たに部品を購入して作ると、部品代に 4,000〜5,000円くらい掛かるのではないでしょうか。

自作だと電流だけを制限して長時間充電するとか、トリクル充電の設定電圧を細かく設定するとか、市販品では設定できない条件で充電できるっていう程度の利点しか無いですね。


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